月別アーカイブ: 5月 2012

豊島弘尚新作展

故豊島和子の弟であり、現主宰豊島重之の兄・画家豊島弘尚の個展のご紹介です。

豊島弘尚新作展 〜二十二世紀の北欧神話

22世紀の片目の少年

顕現1

豊島弘尚(とよしまひろなお)新作個展に寄せて

筆舌に尽くせぬ痛ましい出来事に、絵画芸術は限りなく無力なのか。それとも微かな希望の一灯(いっとう)をかざす営みたりうるのか。青森県八戸出身の画家豊島弘尚は、栃木県那須のアトリエでまっさらな画布を前に、くる日もくる日も茫然としていたにちがいない。東郷青児美術館大賞・河北倫明賞・デーリー東北賞・国立ワルシャワ美術館賞・パリ「ラ・マン・ドール(黄金の手)大賞展」ディプロマ賞ほか、数々の受賞に輝いた画家でさえそうなのだ。

ある日、津波にのまれた鮫の蕪島や階上の臥牛山、種差の地獄穴や河原木工業地帯の光景に筆を走らせている自分に気づく。若き日を育んだ海辺の記憶から始めるしかない、ほとんど無意識にそう体感したのだろう。そしてその海景には、巨大な赤い惑星が飛来している。右上にはレーダーには捉えられない超音速スティルスが三機、左下には海猫の黒い飛影(ひえい)二つ。文化庁在外研修員として北米と北欧に数年滞在した画家にとって、荘厳なまでの北欧神話とオーロラ体験は生涯のテーマとなった。とすれば、この二匹は海猫ではなく、オーディンの神に人類世界の転変を告知する「フギンとムニン」の一対の鴉(からす)であろう。

超脳波検査自像

惑星の異常接近は地球にとって不吉な前兆だが、画家には「救済と再生の祈り」に等しい。見てのとおり、この惑星は三体の頭部から成る。大震災直後に急逝した舞踊家の姉が、画家の弟にだけ開眼してみせた病床の瞬景(しゅんけい)。黙して凝視に徹するオーディンの憤(いきどお)り。その静まりを促す女神フリッグの白い顔貌。けれど絵画とは、描かれる主題よりもその描法にある、とは言を待たない。何よりも瞠目(どうもく)すべきは、震える筆触であろう。慟哭(どうこく)に身をよじり、身を焦がす切っ先の震え。それは同時に「三陸のハマ再生」への苛烈(かれつ)な切っ先にほかならない。

豊島重之(としましげゆき 精神科医・美術展キュレーター・八戸市在住)

豊島弘尚新作展 〜二十二世紀の北欧神話

2012年5月7日(月)~19日(土)11時~19時

会場:始弘画廊(港区南青山5-7-23/03-3400-0875)

銀座線・千代田線・半蔵門線 表参道B3出口3分

  *7日オープニングパーティ 問:090-2998-0224 高沢
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